高畑勲監督の名作・火垂るの墓
「もう二度と観られない名作」
火垂るの墓。
数年前の金曜ロードショーで見かけたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」等、たくさんのジブリ名作を親と一緒に観ましたが、唯一、母が「これだけは観られない」と言っていた作品でした。
私も母になり、ふとしたきっかけで、初めて映画を観ました。
確かに、「二度めを観るのは難しい、でも一度は観るべき」作品だと感じました。
価格:4,239円 |
あらすじ
太平洋戦争中の日本。1945年6月の神戸大空襲から、終戦後の9月頃までの物語です。
この時代を懸命に生きようとした、14歳の清太と4歳の節子の兄妹のお語です。
2人は、76年前の日本を生きた、どこにでもいる普通の兄妹です。
神戸大空襲で、清太と節子は母を失い、家を焼き出され、親戚の西宮のおばさんのところに預けられることになります。
が、おばさんとは折り合いが悪く、2人はおばさんの家を出て、2人の力だけで生きていこうと決めます。
戦争が終わって日本に平和が訪れたはずなのに、苦しい兄妹の生活。
十分な栄養を得られず、弱っていく節子。節子のため、畑泥棒や火事場泥棒を繰り返した清太。
終戦付近の混乱した日本で、「4歳と14歳で生きようと思った」結果は…
なぜ、「蛍」ではなく「火垂る」なのか。
冒頭からすでに暗い結末を想像させるような、高畑監督の考え抜かれた演出が各所に散りばめられています。
感想
「戦争は2度としてはいけない」。
多くの方がこの感想に行き着く作品だと思いますが、それだけでは済まないお話でした。
どこにでもいる普通のきょうだいが、ある日戦争に巻き込まれたらどうなるか?
実話に基づいている作品ですし、世界のどこかでこのようなことが実際に起こっている。
あらすじは大体知っていたし、それなりに気合を入れて観たのですが、数日間引きずりました。
数ヶ月経った現在でも、「Home! Sweet Home!」や「火垂るの墓メインテーマ」が耳から離れません;
単純に「誰がいい、悪い」と割り切れない作品
子供の頃、アニメ絵本を観た私は「おばさんは意地悪…。清太と節子かわいそう」という意見でしたが、大人になった今は、色々な方々の立場を想像して観てしまいます。
「成長するにつれ、感想が変わる作品」だと言われるのも納得です。
戦時中に、遠い親戚のみなしご2人を預かること、その2人がろくにお手伝いも働きもしないこと。
西宮のおばさんには、おばさんなりの立場があったのでしょう。
でも、やっぱりあのおばさんの性格や言動の絶妙の悪さ加減に、大人になった今でも「わかる~」とはならず、元々そういう性格の方だったのでは、と思ってしまいます(^^;
それに、清太のことを「どうして働かなかった? 家を出なければ、節子を死なせなかったのに!」と単純に割り切ることもできずにいます。
私にも妹がいますが、あの時代の14歳だったら、清太のように節子を守ることは、到底できなかったと思うからです。
観る方の立場や考え方によって、感想や意見が分かれそうな作品でした。
西宮のおばさんの家を、眉をひそめて見つめる幽霊の清太は、何を思っていたのでしょうか?
「○はいい人、×は悪い人」と割り切れない、登場人物の性格や立場の作り込みが凄いです。
「もっとうまくやれていたら」?
「あのおばさんの家でのことは、やはり辛かった」?
エンディングは、現代の神戸を見つめる清太の姿で終わります。
清太は、現代になっても成仏できていないのでしょうか。
ずっと後悔を背負って、約3ヶ月間の地獄をループしているのでしょうか…
もう誰も責めていないから(現代の私たちも、二度と悲劇を繰り返さないようにするから)、天国で家族で幸せになって…と思ってしまいます;
まとめ
「火垂るの墓」。
「観てみようかな」と思った方には、ぜひおすすめしたいです。
今まで観る機会がなかった方も、子供の頃に1度観たことがある方も。
娘にも、理解できる年齢になったら観せたいと思っています。